新型コロナウィルス感染症と歯科との関係

全国で緊急事態宣言が解除されましたが、先週に比べ今週は感染者数も増え、町の人出を見ると、容易に収束しないことが想像されます。

完全に社会活動を停止させれば治まるのかもしれませんが、それでは経済的に困窮してしまう人が多く出てしまうことは明らかです。医療崩壊を起こす程度の多少の感染者数を容認しながら社会経済活動をを再開させたというのが現実的なところでしょう。

最終的には集団免疫を得ることによって収束するという考え方もあるわけですから、ここで重要なことは、医療崩壊を起こす程の感染者を出さないこと・感染した場合に重症化して命を落とすことがないようにすることです。

日本疫学会のレポートによると、新型コロナウィルスで死亡する方の多くが敗血症の兆しが見られ、そのスコアが死亡の危険因子として強い相関があったとということです。つまり元々はウィルス性の肺炎でも、死ぬようなときは細菌の関与も大きいということだと思います。

心臓・肺に到達する細菌は口腔内からくると考えられています。口腔内の細菌が口腔粘膜を突き破り体内に入ってきやすい状態が、歯周病・重度の虫歯・破折崩壊した歯根の残存などの歯科疾患です。

つまり、痛くはないが歯茎から膿が出ている状態などは、新型コロナウイルスに感染したときは、重症化のリスクになる可能性があります。

長期戦の様相を呈してきた新型コロナウイルス感染症に対して、口腔内の健康状態の管理が必要な時期に入ったと、考えています。

緊急事態宣言2か月目における歯科治療

当初の予想どおり、1か月では収まらず緊急事態宣言の期間が延びました。2か月目となると、通院しなければならないケースも多少変わってきます。

メインテナンスで定期的に通院なさっていた方の内、歯周ポケットの深い部位があり毎月通っていた方の場合は先月は通院を控えた方も今月はメインテナンスした方が良いでしょう。それ以外2~6か月間隔でメインテナンスしていた方で、先月時期が来てしまった方は、6月まで見合わせても大丈夫だと思います。

根の治療の途中で、1か月以上中断している方は今月は少なくとも1度は通院した方が良いと思います。

詰め物、被せ物、入れ歯などの歯型を採ってから、1か月以上間が空いてしまった方は、早急に通院した方が良いでしょう。仮歯が取れてしまっていたりすると、適合しなくなっている場合があります。

歯科医院のほとんどは現在、いつも以上に院内感染対策を一生懸命行っており、実際スタッフの外部での感染からの医局内クラスターの発生の1例を除けばクラスターも発生しておらず、三重で歯科医師が感染して治療したケースでも、患者さんにはうつらなかったと聞いております。

絶対安全とは申せませんが、各医院での対策をご確認の上、状況に応じて通院の再開をする時期かと思います。

COVID-19蔓延下での歯科通院

東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が発令されました。とりあえず1か月間のですが、こんな時、歯科医院に通院している方はどうしたらよいのでしょうか。

基本的には、自分で考えて決めることですが、歯科医師としてのアドバイスを少し記します。

まず、現在痛みや腫れなどの急性症状がある方ですが、とりあえず症状が収まるまでは通院を続ける方が良いと思います。鎮痛剤を飲んで凌いでいると、熱があっても解熱されてしまい、新型コロナに感染しているのに気づくのが遅れることもあるかもしれません。

痛み等はないが、根の治療の途中の方は通院を中断してもよいですが、仮の蓋を強固なものに変えてもらってから中断した方が良いでしょう。入れ歯やブリッジ、かぶせ物等の歯型を採ってある方は1か月以上間が空いてしまうと出来上がった歯が装着できない場合があるので装着までは通院した方が良いでしょう。

症状のない新しい虫歯の治療予定の方は、しばらく先延ばしにしても構わないと思います。1~6か月間隔の定期クリーニングの方は1か月先延ばしにしてもほとんどのケースで問題はないので、少しお休みしても構いません。口腔衛生状態とウイルス感染しやすさとの関係も取りざたされていますが、日ごろきちんとケアがされていれば、通院のための外出の方がリスクは高いと思います。

その他、入れ歯が壊れた、差し歯が取れた、詰め物被せ物が取れたなどは、1か月程度持つような応急処置はしておいた方が良いと思いますが、新製は今は見合わせた方が良いと思います。

歯科用マイクロスコープ導入

最近の歯科における三種の神器と呼ばれるものの一つに歯科用マイクロスコープがあります。ちなみに他の二つはCTと光学印象によるCAD/CAM冠です。当院では一昨年CTを導入しましたが、このたびマイクロスコープを導入しました。

マイクロスコープは最大30倍に歯を拡大することができ、より精密な診断・治療が行えるようになる器械です。しかしながら、高価であること、治療時間が長くなることにより保険診療では赤字になるため、自由診療で歯内療法(根の治療)歯周病治療を行っている診療所で主に使われていました。

この4月の健康保険診療報酬の改定により、マイクロスコープの効果が保険診療報酬に反映されるようになり、保険診療でも使いやすくなりました。

最近の歯科事情

コンビニより多いと揶揄されている歯科業界ですが、実は最近では大きな法人の診療所では勤務医の人材不足が深刻化しています。歯科医師の国家試験の合格率の低下により若い歯科医師の絶対数が減少していることが一番の原因です。

一般の方には信じられないかもしれませんが、歯科医師国家試験には実技試験がありません。ペーパー試験で尚且つ、合格率の低い試験に合格させるためには、各大学の教育も座学が多くなるの当然の流れです。そのため、多くの大学では卒業した時点では実際の治療技術はなく、その分一人前の歯科医になるまでの期間も長くなっていることも一因です。

昔は難関大学だったため歯科医の子が少なかった国立大学の歯学部でさえ入試の易化により、実家が開業医の学生が増え、勤務せず実家に帰ってしまうことも、影響しています。

この様な状況を鑑みると、以前ほど魅力のない職業と考えられている歯科医師ですが、一時に比べ勤務医の給与も上がっているので、今の中高校生で実家が歯科に関係ない人でも、歯科医の道を志すのも案外良いのかもと思います。