一言で言ってしまうと・・・

最近、電車の中づり広告で週刊誌の見出しを見ると、歯科の特集を目にする機会が多く感じます。一般の治療を受ける方が目にする情報なので、専門家として誤解や間違いはないかと、心配して書店で手に取ると、中には家に持ち帰れないよう雑誌に歯科についての特集が載っていたりして、びっくりすることがあります。

医療に限らず、政治でも経済でも、不正を抑制したり、専門家の一方的な利益や論理によって悪い方向に行ったりしないようにするためにマスメディアには重要な役割があると思います。

”銀歯は虫歯になりやすい・体に悪い”、”すぐ抜歯する歯医者は悪い歯医者”、”インプラントは事故が多く危険だ”、”歯の神経はとってはいけない”インパクトのある記事にしようとするために、言い切ってしまう見出しが多く感じます。

実際、以前はブリッジを入れるために虫歯のない歯を削る場合には、必ず神経を抜くような医院もありましたし、根管治療が得意でないがために、抜かなくてもよい歯が抜いてしまう医院もあったかもしれません。そのような被害?に遭わないために一言でキャッチフレーズとして、”歯を抜かない・神経を取らない・削らない”を覚えておくことは悪いことではないかもしれません。

一言で言ってしまうと、そうなのですが、専門的にはお口全体のことを考えると、抜いたほうが良い状態の歯はありますし、神経も取らざる負えない状態もありますし、歯も削らなければならない場合もあります。

肝心なのは、お口の中全体の将来のことを予測してもらい、高齢になった時に自分の歯がより多く残り、食事がおいしく食べられること状態になるために、その都度ベストと考えられる処置をしてもらうことだと思います

堅いものでもバリバリ噛んだ方がいいの?

歯科医になって30年になりますが、最近、虫歯の治療を受けてない歯が割れてくるケースを以前より見かけるようになった気がします。

虫歯によって歯髄を除去した(神経を抜いた)歯が弱くなり、割れやすくなることは知られていますが、虫歯もなく歯髄も残っている歯が割れてしまうということは本来そうあることではありません。

このような現象の理由として一番最初に考えられるのは、”虫歯が減り、以前より良い歯が増えたことにより、虫歯もないのに割れる歯の数が増えた”ということです。

もう一つは睡眠中の歯ぎしり、日中の食いしばりなどの増加が考えられます。歯ぎしりや食いしばりのはっきりした原因は解明されていませんが、ストレスとの相関関係は否定しがたいものがあります。ストレス社会が原因となっているかもしれません。

歯を割っていらした方のお話を伺うと、多くの方が氷や飴、果ては梅干しの種までも奥歯でかみつぶしてしまうというお話をなさいます。最後の理由としては”健康のためにはよく噛んだ方がいい”という情報から、堅いものをバリバリと勢いよく噛んだ方が良いという誤解が生じていることが考えられます。

よく噛むということは咀嚼の回数が多いということで強く噛むことではありません。飲み込む前の咀嚼の回数が多いことは消化器官への負担の低減、脳への刺激などの恩恵があり重要ですが、堅いものを強く噛むことは歯や顎関節を痛める危険があり、避けた方が良いです。

 

 

歯医者さんで虫歯と言われて・・・

歯や歯茎で気になるところがあって歯医者に行って、気になったところ以外に虫歯を発見された経験をお持ちの方は大勢いらっしゃるでしょう。その中で、何の症状もなかったその虫歯を治療されたら、凍みたり痛くなってしまった経験をお持ちの方も一定数いらっしゃるでしょう。

自覚症状のない虫歯でも、歯髄(歯の中の神経や血管が入っているところ)に近いところの虫歯を削ると、その刺激で歯髄が炎症を起こしてしまうことが多いです。

だいたいは一時的な炎症で、ひと月以内に治まりますが、中には治まらずに歯髄を除去(いわゆる神経を抜く・歯を抜くわけではありません)して痛みを止めなければならない場合もあります。

事前に十分な説明がなかったりすると、治療に不信感をお持ちになる方もおいででしょう。

そのよう場合には”結果的に治療しなかった方が良かったのでは”とお考えになる方もいるでしょう。しかし、そのような深さの虫歯では治療せずに自然に治ることはなく、いずれ痛んだり、歯が崩壊したりするので、放置することはお勧めできません。

最近では治療後の痛みが出ることを懸念して、深い虫歯を一部取り残して抗菌性のある材料を虫歯の上に乗せてから、詰めるという治療もおこなわれていますが、完全に完成された治療とは言い難い状態です。

当院では、リスクについて十分ご理解いただいたうえで、自覚症状のなかった虫歯が、治療によって痛くなることが極力無いように、虫歯を除去する際、細心の注意を払い、場合によっってはごく薄く一層虫歯を意識的に残して、詰めたりさまざまの配慮を行っています。

歯周病の予防

日本人成人の8割もが罹患しているといわれる歯周病、今日は歯周病にならないためには、どうしたらよいのかについて書いてみます。

歯周病は、歯と歯茎の境目の歯肉溝と呼ばれる隙間にたまった歯垢の中の多種多様の細菌の中の一部が歯茎の細胞の中に侵入し引き起こす病気です。

そこで歯周病にならないためには歯肉溝の歯垢を歯ブラシで丁寧に除去すればよいのです。お口の中は唾液にも細菌は浮遊しており、歯肉溝の歯垢を除去しても歯茎の細胞にわずかな細菌は侵入しますが、そのぐらいでは歯周病は発症しません。(若年性の歯周病など、通常お口の中にいないことが多い強い歯周病菌に感染してしまったケースなどは歯垢を除去していても発症することがあります)

ただ、歯肉溝の歯垢をすべての歯について除去するのは時間もかかってしまい、難しいのが現実です。そのため飲み薬や、うがい薬で、歯周病の予防ができないかという研究は、これまでも盛んにされてきましたが、未だ決定的なものは開発されていません。

現状では、歯医者さんで歯肉溝の歯垢が除去できているかののチェックと、上手に除去できるブラッシング方法を教わることが確実な歯周病予防方法です。

大人の虫歯予防

今日は大人の虫歯予防について書いてみます.

虫歯予防は乳歯が生え始めたころから、計画的に行うことで最大の効果が発揮されます。虫歯予防の基本はブラッシングとフロッシング(口腔清掃用の糸)、フッ素塗布、食事・間食・糖分を含む飲料の取り方、です。

大手町朝日歯科に初診でお見えになる方は、ご家族のご紹介の方を除くと、ほとんどが22歳以上の方で、それぞれ幼少期からの虫歯予防の状態は様々です。

この時点で新たな虫歯予防の仕方・必要性も、それぞれです。たとえば35歳以上でいままで虫歯治療の経験がなく、検査の結果でも虫歯が見つからなかった方ならば、高齢になるまで特に新たな虫歯予防は必要ありません。たとえ、ブラッシングの状態が完璧でなくても、おそらく唾液が出にくくなる60歳以上になるまではこのまま虫歯はできないでしょう。

同じ状態でも20歳台の方だと、まだこれから虫歯の出来る可能性はあります。ブラッシングの出来てないところのチェックとその部分の歯垢がきちんと落とせるように、ブラッシングの改善をすることと、定期的なフッ素塗布をしていった方が安全です。

このように、年齢やお口の中の状態により、大人の虫歯予防の仕方・必要性は様々で、判断も難しいところです。予防はすぐに結果が出るわけでないので、定期的に知識と経験のある歯科医に診てもらって、チェックしてもらうのが無難です。

お口の中の2大疾患である歯周病予防は、虫歯予防とは全く違うので、そのことについてはまた改めて書きたいと思います。

大手町朝日歯科 院長