口腔癌と歯科検診

 平均寿命が延びたことによって口腔癌の発生頻度も増えています。私が学生のころには一人の歯科医が生涯に口腔癌と遭遇ずるのは2例ぐらいだといわれていました。ところが、歯科医師が増え、当時より一人の歯科医師が診る患者数は減少しているにもかかわらず、私個人でも既にその倍以上の口腔がん患者と遭遇しております。

 歯科医師会では近年会員歯科医師に対して、日常診療の中で早期の口腔癌を発見できるように、講習会が盛んに開催されています。(現在はコロナ禍のためオンラインによるものですが。)

 癌などの悪性腫瘍は全身に出来ますが、治療法の進歩により決して死の病ではなくなりました。初期のものはもちろん、多少ステージが進んだものでも、かなり延命できるケースが増えています。逆に考えると治療後、長く生きていくことになるので、術後のQOLが大切になります。

 そこで問題になるのが、口腔癌が顎顔面に出来る癌であることです。癌治療は化学療法・放射線療法などもありますが、未だに多くのケースで切除治療が第1選択となります。そのため、ステージが進んだ口腔癌の場合、治療後に顔貌に大きな変化が出てしまい、個人のとらえ方次第ではありますが、QOLが内臓に出来る悪性腫瘍に比べ、著しく低下してしまう場合が多いです。

 このような問題は早期発見によって、防げる可能性は高まります。虫歯や歯周病の検診のみならず、50歳を過ぎたあたりから口腔癌の検診も合わせて受けることが推奨されます。最近は歯科医師会に加入していないクリニックも多数あり、個人で研鑽をつんでいる方も多いのですが、歯科医師会加入しているクリニックの多くが口腔がん検診も行っています。