歯科医療の変化・進化(歯周病編)

歯周病の治療は私の中ではこの35年で比較的変化の少ない印象があります。

歯周病によって溶けてしまった骨を再生させる治療がいくつか開発されましたが、適応範囲や骨の再生量があまり多くないことを考えれば、劇的な進歩とは言いにくいし、一般の開業医であまり行われていない現実があります。

そんな中で、治療法ではないのですが、考え方の変化として定期的なメインテナンスが行われるようになりました。メインテナンスとは歯垢歯石などの除去を歯科医院で行ってもらうことです。

歯周病は多くの場合歯と歯肉の境目の歯垢の残りが原因で生じ、治療の第1歩は正しい歯ブラシの仕方を身に着けることです。その後。歯石除去・歯肉の手術などを行い歯の根と歯肉がはがれて生じる隙間(歯周ポケット)を無くすことが治療の終着点・治癒と考えられています。

歯は成人で通常28から32本ありますが、すべての歯の歯周病を治癒させることは困難ですし、たとえ治癒しても油断するとすぐ再発します。

以前は治癒したら治療は終了、治癒できない部位は病態が進行すれば抜歯するとして治療終了となっていました。そのため一度治癒した人でも数年が再発して来院することがありました。

この20年ぐらいはメインテナンスという考えが健康保険にも取り入れられ、治癒した部位の再発防止・治癒しなかった部位の歯周病の進行の鈍化の効果があり、結果的に歯周病にり患した歯の長期保存が可能になってきています。

継続的に1~3か月に一度の定期的な通院が必要になりますが、日常の正しい歯ブラシが出来ている人にはとても有効ですし、多少歯ブラシの仕方に不備がある人でも一定の効果があり、統計学的なエビデンスもあります。