堅いものでもバリバリ噛んだ方がいいの?

歯科医になって30年になりますが、最近、虫歯の治療を受けてない歯が割れてくるケースを以前より見かけるようになった気がします。

虫歯によって歯髄を除去した(神経を抜いた)歯が弱くなり、割れやすくなることは知られていますが、虫歯もなく歯髄も残っている歯が割れてしまうということは本来そうあることではありません。

このような現象の理由として一番最初に考えられるのは、”虫歯が減り、以前より良い歯が増えたことにより、虫歯もないのに割れる歯の数が増えた”ということです。

もう一つは睡眠中の歯ぎしり、日中の食いしばりなどの増加が考えられます。歯ぎしりや食いしばりのはっきりした原因は解明されていませんが、ストレスとの相関関係は否定しがたいものがあります。ストレス社会が原因となっているかもしれません。

歯を割っていらした方のお話を伺うと、多くの方が氷や飴、果ては梅干しの種までも奥歯でかみつぶしてしまうというお話をなさいます。最後の理由としては”健康のためにはよく噛んだ方がいい”という情報から、堅いものをバリバリと勢いよく噛んだ方が良いという誤解が生じていることが考えられます。

よく噛むということは咀嚼の回数が多いということで強く噛むことではありません。飲み込む前の咀嚼の回数が多いことは消化器官への負担の低減、脳への刺激などの恩恵があり重要ですが、堅いものを強く噛むことは歯や顎関節を痛める危険があり、避けた方が良いです。